乳幼児期の発達的重要性から、近年「保育の質」の向上については高い関心が寄せられています。
「保育」の範疇は大変幅広いものですが、本研究室は多くの保育実践現場との共同研究を行うことで実践のための研究を目指しています。
例えばその中から二例挙げてご紹介します。
まずは、1・2歳児における身体活動に関する評価作成に向けた試みを紹介します。
1・2 歳児ではすでに人間の基本的な運動機能や指先の機能の著しい発達がみられます。そのため1・2歳児にとって身体活動(安静にしているとき以外のすべての動き)は発達における重要な役割を担っています。
本研究室では、保育者32名と「子どもが心地よく身体を動かすために必要な保育環境」についてラベル抽出を行い、15回にわたる修正を重ねてルーブリック型保育環境評価指標案の検討を行いました。
加えて、乳児58名のルーブリック評価と実際の乳児の身体活動量を1か月間測定し、両者の関連から評価票の精度を上げることで、「心地よく身体を動かすための保育環境整備 -1・2歳児を対象にしたルーブリック評価-」を作成しました。
この身体活動支援ツールを活用いただくことで、それを到達するために必要な大人のかかわりを参照することができ、保育施設や家庭における健康的な子どもの育成につながることが期待されます。(この研究はJSPS科研費 16K17404の助成を受けて実施したものです)
他にも、保育者自が自身の保育を振り返る最も身近な記録物であり、子どもの育ちについて保護者と情報共有を行う手段である「連絡帳」に着目した研究があります。
保育者が考える質の高い連絡帳の共通点について検討し、連絡帳に必要な保育者の専門性を高めるための研修材料の開発を行いました。
研修では「子どもの姿を読み取る視点」やそれを言語化した「記録物」を保育者同士で検討することで、新任期でも中堅・ベテランでも、ファシリテーターを任されることが多い主任の先生方でも「保育の課題に自ら気づき改善する」サイクルが生じました。
また自身の保育観が明確になると共に、保育者同士の協働の機会となることが確認されました。(この研究は福岡県保育協会保育士会研究部会との共同研究です)